バッテリーのアノードにおけるX線/CTオーバーハングの自動分析を、AIが高速化します

News, X線検査装置

リチウムイオン電池(LiB)セル内のアノードのオーバーハングの検査・分析は、X線CTを利用することで、高い精度と再現性を保ちながら自動的に実行が可能です。しかしながら、量産環境においては検査時間の短縮が鍵を握ります。ニコン産業機器事業部(https://industry.nikon.com)が開発したAIを搭載したLiB.オーバーハング解析 ソフトウェアにより、これらの課題を解決することが可能となります。

このソフトウェアは、市場におけるバッテリー需要の高まりを満たすのに十分な高い歩留まりを達成し、電気自動車、エネルギー貯蔵システム、およびその他のバッテリー駆動の機器のユーザーからの製品保証に関する高額なクレームの発生件数を抑えることに貢献します。LiB.オーバーハング解析ソフトウェアは、製造工程の上流、生産ライン上で検査を行うことで、製品品質の向上を目指すものです。ニコンでは、この新しい分析アプローチと、マイクロフォーカスX線源、回転ターゲット、ハーフターンCTといった革新的なテクノロジーを組み合わせたトータルソリューションを提供します。

LiBセルのアノードは、リチウムメッキとデンドライトの析出をふせぐために、カソードよりも面積が大きいため、カソードに対応するエリアが存在しない受動的なエリアが存在し、これをオーバーハング・リージョンと呼びます。これらのエリアの面積は、一定的に厳密な範囲内に維持しなければならず、そうでない場合にはバッテリーの性能が低下したり、極端な場合には発火したりする可能性があります。このため、アノードのオーバーハングを分析する工程は非常に重要です。

従来のX線透過画像検査は、検査時間が短いという利点があります。しかしながら、対象となるシートが完全に平坦でない場合に、対象物の個々の層を区別することが極めて難しく、精度や再現性が十分に得られないという問題がありました。

比較的新たなテクノロジーである3D X線/CTによるオーバーハング解析の自動化は、これらの問題点をすべて解消するものです。LiB.オーバーハング解析は、高速スキャンによる3D画像に含まれるノイズの影響を受けにくいため、生産ラインの速度に対応しうる速度を実現しています。

これは、ニコンの先端的な機械学習を用いたAIモデルにより、過去の情報を参照して、一般的なノイズやスキャンのアーチファクトが存在する場合でも、セル内のアノードのオーバーハングにおける特徴や欠陥を特定、分類することができるためです。スキャン後のデータにノイズやアーチファクトが含まれる場合、従来の分析手段では対応できず、自動的にアノードとカソードのレイヤーを区分しようとする際にエラーが発生します。より高品質な画像を生成するためにはスキャン速度を引き下げざるを得ないため、品質管理(QC)業務の生産性が低下します。

LiB.オーバーハング解析ソフトウェアは、ニコンのX線CTシステムであるXT Hシリーズのために独自開発したもので、工場のインラインまたはラインサイドにおいて、バッテリーセルを迅速、正確、かつ安定的にスキャンすることができます。ニコンのエンジニアが、CTスキャンのパラメータおよびLiB.オーバーハング解析の設定を細かく調整することで、システムにおける検査速度と繰り返し再現性を最適化いたします。

このニコンの新しいソフトウェアでは、アノード/カソードのスタックにおける各レイヤーを対象として、アノードのオーバーハングが自動的に計算され、単純な合格/不合格という結果のみならず、重要な検査箇所を数値で表示することもでき、お客様は自社イーズに合わせた統計データを活用することも可能です。どちらの方法でも、組立ラインで問題を早期に検知し、数値化することが可能なため、このデータをフィードバックすることにより、生産プロセスを最適化し、スループットを高め、不良品の発生を抑制することができます。検査データは、製造システムデータベースで保存することができ、Quality 4.0に合致した個別セル単位での完全なトレーサビリティを提供します。

ニコンが提供するその他様々な独自のテクノロジーも、この検査用途を実現する上で欠くことができない役割を担っており、これらのテクノロジーなしでは、迅速なデータ取得機能を実現することはできません。代表的なテクノロジーとしては、弊社の強力なマイクロフォーカスX線源の透過力が挙げられます。さらにもう一つの独自技術としては、ローテーティング.ターゲット 2.0が挙げられます。これは、電子がタングステン表面に衝突する際の発熱を迅速に吸収するためにターゲットを回転させるもので、従来よりも高出力が可能になりました。また、ニコンのハーフ.ターン CTは、X線サイクルにおいて検査対象のサンプルを360度回転させる代わりに180度回転させるだけで、同等品質の画像を作成するのに必要なデータを得ることができ、検査業務の効率性が2倍に向上します。詳細については、こちらをご覧ください。

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社ニコンソリューションズ
産業機器営業本部 第二営業戦略部
tel:03-6433-3994

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