スピードへの挑戦

Roush Yates Engines社、「iNEXIV VMA-4540」で非接触検査の高速化を実現

2003年、Jack Roush氏とRobert Yates氏は、NASCAR(全米自動車競争協会)主催のレースにおいて、専属エンジンビルダーとしてフォード・モーター社と提携。米国ノースカロライナ州のモーズビルにRoush Yates Engines(RYE)社を創設し、現在はCEOのDoug Yates氏が会社を率いています。その後フォードは、NASCAR、IMSA(国際モータースポーツ協会)、FIA(国際自動車連盟)が主催するレースで23回の優勝、356回の勝利、324回のポールポジション獲得を達成し、この提携は大きな成功を収めています。

RYE社は創設時から成功を積み重ね、無数の業績と新記録を打ち立ててきました。スピードを追求し、2013年まで同社を採用したTeam Penskeは、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでツインターボFord EcoBoost V6レースエンジンを採用し、222.971mphを記録しています。

RYE社は創設以来、特にNASCAR主催のレースで活躍し、多くの歴史的な瞬間を作り出してきました。2018年にはNikon Metrologyとの新たな提携関係を発表し、品質保証にNikon Metrologyのソフトウェアや測定システムの利用を開始。中でもCNC画像測定システム「iNEXIV VMA-4540」は、品質管理部門にとって極めて重要で価値が高く、使いやすいシステムとなっています。

時代を先取り

スピードを追求する企業は、レースにおけるスピードに限らず、最先端技術の開発スピードについても、その重要性を理解しています。競争の激しい環境において、競合他社に先んじて最新機器を投入し、完全に機能するよう、厳しいスケジュールに間に合わせることが肝要です。

RYE社は、労働集約型プログラミングやCMMを利用したワークフローにおける潜在的なボトルネックなど、さまざまな要因を組み合わせることで、より優れた堅牢な非接触測定システムの実現に取り組んできました。従来の方法ではエンジン品質を損なう多くのリスクに直面し、手動の顕微鏡では正確かつ再現性の高いデータの取得に多くの時間を要していました。複雑な半径やテーパーの外径については、接触型の検査システムでは形状の測定が困難であることも判明しましたが、CMMで測定をするには複雑なフィクスチャを追加で用意する必要があり、すぐに調達するのは不可能です。最終的に、少ないフィクスチャで半径やテーパー、その他の測定に対応可能な非接触測定システムを採用することが、ワークフローにおけるボトルネックの軽減、さらには精度と再現性の向上を実現し、結果として全体のコスト削減にもつながるという考えに至りました。

RYE社は、上記の問題に対処し、新しい要件にも対応するため、業界をリードするニコンのCMM画像測定システム「iNEXIV VMA-4540」とソフトウェア「CMM-Manager」の組み合わせを選択。同システムは2018年3月に導入され、現在でも毎日のように広範囲の目的に活用されています。

NASCAR製品の品質管理部長を務めるJennifer LaFever氏は、最初の週にトレーナーからシステムの使用方法について説明を受け、翌週には一人で作業が行えるようになったと語っています。「CMM-Managerのレイアウトはとてもユーザーフレンドリーで、視覚的なインターフェイスも直感的で分かりやすくなっています。新人プログラマーにとっても、それほど難しいものではありません」と彼女は続けます。品質管理部門外のスタッフにも使用方法のトレーニングが実施され、欠陥や障害、形状について、測定と高解像度の写真撮影がすぐに行えるようになりました。

トレーニングは各人のニーズに合わせてカスタマイズされたもので、操作に必要なスキルがすぐに習得できました。最初の頃は、このソフトウェアの一般的な情報が書かれたトレーニング教材を使っていましたが、その後は各人のニーズに合わせたものに変更しています。実際の部品に基づいたプログラムをトレーナーと一緒に作成し、トレーニングを終えてからも、その作成したプログラムを実務で利用しています

-Jennifer LaFever氏(RYE社NASCAR製品品質管理部長)

現在、「iNEXIV VMA-4540」はNASCAR用エンジン部品の測定に使用され、対象部品はガスケット、クリップ、Oリング、ローラー半径、オイルホール、ロッカーカップなど、約50種類の個別部品も含め、年間で約50,000点にも上ります。これほどの量を処理する上、速度と精度は不可欠です。「iNEXIV VMA-4540」は、小さく脆弱な部品に接触することなく、損傷を与えることもなく、信頼性の高い結果が得られます。

スピーディな評価で迅速な対応を実現

「CMM-Manager」は直感的で分かりやすく、新しい部品のプログラミングも極めて高速に行うことができます。

RYE社では情報が鍵になります。毎週行われるレースに向けて改善と改良に取り組み、その成果をレースに生かすには、情報を迅速に得ることが不可欠です。微調整を素早く行うほど、チームの競争力が強化され、レースに勝利するチャンスも増大します。

品質管理技術者で映像プログラマーも務めるAlexander Morothy氏は、この1年間、定期的に「iNEXIV VMA-4540」を使用し、そのスピードと精度の高さに大きな感銘を受けています。

「iNEXIV VMA-4540」は、複数のデータポイントを従来方法よりもはるかに速く評価できます。より迅速に解答を出せるということで、製造エンジニアリング部門は懸念事項について素早く対応し、改善を施すことができるのです。例として、ピンによる小さな穴のチェックが挙げられます。品質管理部門は、12〜14分で100本のピンで極小の穴をチェックしながら、同時に他の点検作業も実行していますが、従来の方法では20〜30分必要でした。しかも、他の作業を平行して行うことなど不可能でした。その結果、点検時間を50%短縮することができ、労働時間で換算すると97%もの短縮を実現しています。

『iNEXIV VMA-4540』は測定とデータ収集を極めて迅速に実行できます。速度面での最大の恩恵は『CMM-Manager』によるもので、新しい部品向けのプログラム作成がとてもスピーディーに行えます。接触検査の場合も、映像と接触の同時プログラミングが容易で正確になります

Alexander Morothy氏(RYE社品質管理技術者、映像プログラマー)

Morothy氏は、「CMM-Manager」によるアラインメントプロセスやデータレポートを利用することで、線形測定やプログラム作成、長い部品の測定が非常に簡単になると語っています。同じ品質管理部門の同僚が、ある部品の全長にわたり、関連のない複数の形状を測定して、形状の間の測定値を系統的なレポートにすることも可能です。「iNEXIV VMA-4540」は、ステージの長さ全体を約3秒で移動し、大きな部品であっても素早く測定できます。従来の方法では、それぞれのガスケット上の8つの寸法を別々に計測するのに2分を要していました。「iNEXIV VMA-4540」では、最大5個のガスケットをステージに置いた状態で、全てを2〜3分以内で測定可能です。これにより、全体的な効率と性能が向上し、検査時間が約80%短縮されます。

最新のイノベーションをライバルよりも先にレースに投入

「iNEXIV VMA-4540」は、ステージの長さ全体を約3秒で移動し、大きな部品であっても素早く測定できます。

「iNEXIV VMA 4540」は、検査時間と労働時間を大幅に短縮するなど、その価値をRYE社で十分に発揮しています。「CMM-Manager」がプログラミング初心者と上級者の両方にとって容易に使用できる点も同システムの重要な要素の1つであり、新しい部品向けのプログラム作成が迅速に実行可能です。接触検査の場合において、映像と接触の同時プログラミングが容易かつ正確に行えます。

品質管理部門は、ワークフローにおけるボトルネックのリスクを減らすことで、極めて正確な結果を短い時間で、より効率的に取得できるようになりました。高速かつ正確で、非常に再現性の高い測定が実現したことで、品質管理部門と製造エンジニアリング部門の間のコミュニケーションやフィードバックループにかかる時間の短縮を実現しています。チームワークの効率を向上させることは、最新のイノベーションを素早く実現させる上で極めて重要です。RYE社は、各部門のパフォーマンスを最適に高速化することで生産スピードを高め、その結果、サーキットの内外において勝利を収めているのです。

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