X線テクノロジーが、植物に関する新しい書籍を生み出す契機に

Nikon MetrologyのX線CT検査装置は、導入から7年が経過してもほぼ問題なく機能し続け、ノルウェーの植物相に文字通り、光を当てる結果になっています

2D X-rays of various plants taken by Prof Hammer for the new book, “Flora Norvegica Radiographica”,
Hammer教授が新刊『Flora Norvegica Radiographica』(Hammer夫妻著、Spartacus Forlag社刊)のために撮影した、植物の二次元X線画像。

ノルウェーの司教で植物学者でもあったヨハン・エルンスト・グンネルスが、母国の植物についてラテン語で記した著書『Flora Norvegica(ノルウェーの植物)』を刊行したのは、今を遡ること250年前。時は流れ、2020年、オスロ大学自然史博物館のØyvind Hammer教授が、研究者で植物学者でもある妻のMarte Holten-Jørgensenと共著で、ノルウェーの植物相に関する書籍を刊行しました。新刊には、優れた学者であったグンネルスへの敬意を表し、『Flora Norvegica Radiographica(ノルウェーの植物・X線画像)』とタイトルが付けられ、執筆に3年の年月をかけた後、Spartacus Forlag社から出版されました。

この本は、タイトルの通り、植物のX線画像を集めたものです。都市や道端、野生環境などで見られる多くの植物の内部を示した見事な詳細画像が、合計110点掲載されています。画像にはその植物の生態に加え、医療、民間伝承、文学などとの関連についても解説が付いています。科学的な教科書というよりも、植物の多様性や美しさ、人類にとっての重要性などを無条件に讃える内容です。タンポポ、カエデ、スズラン、ヤナギ、野イチゴ、キャベツ、ハマナスといった日常的な種に加え、稀少種や絶滅危惧種も含まれています。Hammer教授は「私の仕事では、花や植物の他にも、化石、工芸品、昆虫など、あらゆるもののX線画像を撮りますが、被写体に対して興味を持ったことはありませんでした。でもそれは、ノルウェーの植物がどれほど美しく、素晴らしいものであるのかに気づく前の話です」と語りました。

「その後、インターネットを通じて、植物のX線画像には長い歴史があることを知りましたが、1世紀以上にわたり、一種のアンダーグラウンド芸術と見なされていました。この本は副業で出したものですが、ノルウェーの自然に光を当てて宣伝するという点では、博物館の教授という私の職務に合ったものです」

もちろん、「光を当てる」といっても可視光線の領域ではなく、Nikon Metrologyが7年前にオスロ大学自然史博物館に提供した検査用CT装置「XT H 225 ST」で生成された、電磁スペクトルのX線領域の光です。同装置はHammer教授のお気に入りで、全ての画像製作は教授が監修しました。マイクロフォーカスの透過型ターゲットで撮影した画像は、サンプルの細部まで捉えています。執筆にはJørgensen氏も関わり、サンプルの採集と収集は2人が共同で行いました。

この本のために300点にも及ぶ画像が撮影され、1点につき3時間ほどの作業時間が必要でした。これには、植物の検出・採集、装置への配置、複数のX線写真を撮影して平均化することによるイメージ作成、その後のデータのポストプロセスも含まれます。このプロジェクトには時間的な制約がなかったため、Hammer教授は最適な画像が取得できるようにシステムの柔軟性を最大限に活用し、データ取得やイメージ統合に時間をかける機器設定を選択しています。

Hammer教授は語ります。

「X線CT検査装置は、文字通り『新しい光』で、植物の多様性とはかない美しさを映し出してくれます。科学的観点から見ても、美的観点から見ても、撮影した画像は驚嘆に値するものであり、その多くは非常にシャープです。X線イメージやCTイメージの美しさにとても強く引かれました」

撮影の際、Hammer教授は、植物サンプルを平らに配置するのではなく、写真のように吊ったり寝かしたりして自然な状態を維持している。

「Nikon Metrologyの機器は、スムーズな動きと一貫した性能で、仕事がとても楽に進みます。使い始めて7年、問題はほとんどありません。ちなみに、私たちの次のプロジェクトは、ノルウェー沿岸に棲息する豊富な海洋生物に関する書籍になりそうです」

オスロ大学自然史博物館では、地質学者や生物学者、考古学者もX線CT検査装置を使用しています。Hammer教授によると、X線CTは特に化石研究に有効だそうです。サンプルを破壊することなく、研究者が岩石の中身を確認して、その中にある化石を三次元的に調べることができます。

面白いことに、教授はこの本のために植物を撮影した際、三次元のCT撮影ではなく、二次元のまま残すことにしました。植物のさまざまな要素の密度と厚さによって検出器を貫通するX線の量が異なるため、その差がグレーの濃淡で映し出されます。蜜腺や種子など、通常は葉や他の外部構造によって見ることのできない花の内部構造も、極めて詳細に映すことができるのです。植物標本を作る古い方法によく似ていますが、サンプルを平らにしてねじ曲げることなく、自然の状態で寝かせたり吊したりして撮影することで、より正確な記録を残ることが可能になります。

Øyvind Hammer教授と「XT H 225 ST」(オスロ大学自然史博物館にて)

オスロ大学自然史博物館に設置された「XT H 225 ST

2013年、オスロ大学は、Nikon Metrologyの「XT H 225 ST」を購入し、小さくて柔らかい物体から大きくて高密度な物体まで、スキャンの柔軟性を最大限に確保するため、透過型ターゲットと反射形ターゲットを併せて導入しました。同大学の自然史博物館では、堆積物コア、岩石コア(直径10cm以下)、化石、昆虫、骨物質、鉱物試料、物理実験用試料など、広範囲にわたる物体の調査に同装置を活用しています。「XT H 225 ST」は、最少スポットサイズ1µmの180kV透過型と、最小スポットサイズ3µmの225kV反射型の2種類のX線源が搭載可能で、225kV反射型は複数のターゲット材(タングステン、銅、モリブデン、銀)が迅速に交換できます。Hammer教授は、岩石と化石の研究に「XT H 225 ST」を使用してきました。教授の情熱は、頭足類やその他の無脊椎動、有孔虫綱に加え、今では植物や花にも向けられています。

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