デュアル.マテリアル CTにより、生産ラインのアプリケーションに適した高速のX線スキャンを実現

News, X線検査装置

X線/CT検査装置(コンピュータ断層撮影)は、構成部品の内部と外部の両方を非破壊的に検査、測定できる点はよく知られています。しかし従来のCTスキャンでは、業界で一般に用いられる金属とプラスチックといった2種類の材料を利用した組立部品に対して、生産環境における品質管理(QC)が十分に行えませんでした。

これは、画像処理のために十分な解像度を持つデータセットを生成するには長いスキャン時間が必要であり、リアルタイムに検査を実行する要件を満たすことができないためです。反対に、スキャンの速度を速めた場合、画像に含まれるアーチファクトを除去するために、熟練したオペレータが手作業で後処理を行わなければ正確な結果を得ることができません。この場合も、作業に時間がかかり、人的介入により正確性が失われます。

ニコン産業機器事業部では、CT技術をインダストリー4.0のアプリケーションで活用する上での困難を克服するために、再構築のためのアルゴリズムを新たに開発し、スキャンに要する時間を従来の10分の1以上に短縮することに成功しました。このソフトウェアの市場投入前のトライアル試験では、対象部品の大きさや複雑さにより異なるものの、金属とプラスチックの素材を用いた一般的なコネクタに対するスキャン時間が10倍以上高速化され、現場の生産ラインにおいてサンプル検査と同時にCTスキャンを実行できるようになりました。

デュアル.マテリアル CTは、その名の通り、密度が異なる2種類の素材で構成された部品に対するCTスキャンの効率を大幅に向上させるソフトウェアです。対象部品をニコンのX線CT装置内で回転させながら撮影した2DのX線画像から再構築した3D画像において、2種類の素材を区別する機能が大幅に向上しました。主な利用アプリケーションとしては、外側被覆のコネクタを生産する工場や、吸入器やアドレナリンの自己注入キットといった医療機器の組立工場が挙げられます。デュアル.マテリアル CTはさらに、研究所をはじめとする産業以外の環境でも活躍します。

このソフトウェアの処理エンジンは、画像を再構成する過程において、高密度の素材により発生したストリーク・アーチファクトが低密度のエリアを不明瞭にする度合いを軽減します。現在一般に市販されているCTスキャンシステムでは、実際には多色であるX線を単色であると想定した再構築エンジンを採用しています。これにより、X線に対してフィルターを用いなければならないため、露出時間が延び、画像撮影の時間が長くなります。ニコンの再構築エンジンでは、組立部品に含まれる2種類の材料の様々な組み合わせに応じて減弱を決定、調整することで、多色X線ビームの欠点を克服することができるため、コントラストノイズ比を大きく改善することができます。この結果として、デュアル.マテリアル CT スキャンのX線源はフィルターを用いる必要がなく、ディテクターの露出時間を非常に短く設定できるため、フレームレートとスキャン時間が短縮されます。

デュアル.マテリアル CT による再構築は自動化されたプロセスであり、様々な構成要素にわたる再現性が高いため、密度が異なる2種類の材料で構成される組立部品を検査する際にも高度なスキャン技術の知識が必要ありません。従来のCT画像の再構築よりもはるかに短時間で、ビジュアリゼーションの精度が向上すると共に、構成部品の表面または内部における欠陥をより正確に定義できるため、品質管理業務における生産性が向上します。この新しいソフトウェアと自動化されたハンドリング機能により、高速なスキャン機能を実現すると同時にマニュアル作業によるデータ編集を必要としない利点が提供できるため、2種類の材料を用いた組立部品に対する生産環境での品質管理を迅速かつ自動的に実行することができ、Quality 4.0の要件を満たすことができます。

デュアル.マテリアル CT のアルゴリズムは、ニコンが独自に開発したX線/CTシリーズとシームレスに機能するように弊社エンジニアリング部門が独自開発したものです。このオプションは、対象となる機器の設定や出力に関わらず、すべての新規導入または現在稼働中の機器を対象として利用することができます。詳細については、こちらをご覧ください。

 

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社ニコンソリューションズ
産業機器営業本部 第二営業戦略部
tel:03-6433-3994

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