韓国鉄鋼メーカーのR&Dセンターが自動車用鋼材溶接部の品質検査にX線CT検査装置を採用

世界的な鉄鋼会社の一つであるPOSCOは自社のグローバルR&DセンターにX線CT(コンピュータ断層撮影)システムを新たに導入しました。 昨年下半期から本格稼動に入ったマイクロフォーカスXT H225 ST 2xシステムは、最大450Wの連続作動が可能なニコン独自の反射型回転ターゲット(Rotation.Target 2.0)線源を搭載し、業界最高レベルの性能を提供します。 一般的なX線源と比較すると同等の撮像時間では3倍の解像度を実現。あるいは、同等の解像度では3 倍のスキャン時間を実現します。

POSCOグローバルR&Dセンターの鉄鋼ソリューション研究所は、2021年からニコンが提供する受託計測サービスを利用し、主にPOSCOで生産および開発している鉄鋼製品の溶接品質が自動車業界で要求する水準を満たしているかを確認するために活用され、優れた溶接品質を持つ素材の開発を進めてきました。 自動車の衝突安全性向上および軽量化に効果的な鋼素材の開発過程で、耐食性向上のために採用された亜鉛メッキが、抵抗点溶接といった車体部品溶接中に、溶接部の内部に浸透して亀裂を引き起こす現象(以下LME割れ、liquid metal embrittlement (LME) cracking)を確認しました。

そこでPOSCOは、様々な新技術を適用してこのようなLME割れに対する抵抗性の高い素材を開発するとともに、LME割れが溶接部の強度および疲労特性に及ぼす影響を研究しました。 このような研究のためには、溶接試験片の亀裂の有無・大きさに関する定量的な情報を確認し、性能評価及び分析が必要なため、非破壊で内部の亀裂に関する定量的な情報を得ることのできるX線CTでの検査が必要でした。

POSCOはニコンが提供する受託計測サービスを利用することで、短期間に精密な鋼板と部品に対する総合的なCT結果を得ることができました。その結果の分析を通して、LME割れが存在する位置および大きさによって溶接部性能に及ぼす影響度が異なることを確認しました。 この研究結果を国内外の学術誌に発表し、様々な自動車メーカーとLME割れに対する基準の制定·改正に役立てました。

鉄鋼ソリューション研究所のオム·サンホ首席研究員からは ニコンのX線選定理由について以下のコメントを頂きました。「X線装置への投資を検討する際、研究目的に合致する装置性能だけでなく、ニコンからの継続的なサポートによりシステムを深く理解できたことも重要なポイントとなりました。他のどのメーカーにも無いニコン独自の反射型回転ターゲット(Rotating Target 2.0)の急速な熱放出のおかげで、マイクロレベルの非常に小さなフォーカルスポットを実現することができ、微細な亀裂を確認することができました。」

 

「ニコンのシステムはハーフターンCTを特徴とし、スキャン中に検査物が回転する角度をほぼ半分に減らし、画像品質を失うことなく処理速度がほぼ2倍となります。オープンチューブ設計とフィラメントの長寿命および簡単な交換により、維持コストが安く抑えられます。 また、システムは補正が容易でCTデータを獲得して再構成するソフトウェアが非常に優れています」

鉄鋼ソリューション研究所は、自動車分野だけでなく鉄鋼を使用する様々な産業分野を支えています。 今回のニコンとのパートナーシップは、今後も技術革新の先頭に立ち続けるという意志を示しています。 両社はそれぞれの分野で市場をリードする企業として、製造業のあらゆる分野で品質管理を革新し、生産性を最大化するという共通の目標を持っています。

 

 

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